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民泊の3つのカテゴリーとその違い

生前整理
Nose Kohei

はじめに:3種類の民泊

民泊は、旅行者に宿泊施設を提供するサービスですが、日本では3つの異なるカテゴリーに分けられます。これらは、簡易宿所特区民泊、そして新法民泊です。それぞれのカテゴリーは異なる法律に基づいており、運営の目的や立地、物件の特徴に応じて選ばれます。

簡易宿所(旅館業法)

簡易宿所とは?

簡易宿所は、旅館業法に基づく宿泊施設で、民宿やペンション、カプセルホテルなどが含まれます。このカテゴリーの特徴は、宿泊日数制限や年間営業日数制限がないことです。しかし、申請が最も難しく、住居専用地域での営業はできません。また、ホテルや旅館としての建築基準を満たす必要があり、最低床面積は3.3㎡/人以上が必要です。

簡易宿所を開始するための手続き

簡易宿所を開始するための手続きは以下の通りです:

  1. 事前相談:まず、地域の保健所や自治体に相談を行い、必要な情報を収集します。
  2. 許可申請:簡易宿所営業の許可を得るために必要な書類を準備し、申請を行います。
  3. 施設検査:申請が受理された後、施設が旅館業法の基準を満たしているかの検査が行われます。
  4. 許可・営業開始:すべての基準を満たしていれば、許可証が交付され、営業を開始できます。

許可を得るためには、施設が一定の構造設備基準を満たしている必要があります。例えば、客室数に特別な規制はありませんが、客室の床面積は一定以上必要です。また、宿泊者のニーズを満たす入浴設備や適切な換気、採光、照明、防湿、排水の設備が必要です。

簡易宿泊所を開始するための費用

簡易宿所を開始するための費用については、以下の要素が考慮されます:

  1. 許可申請の手数料: 通常、1万円から3万円程度です。
  2. 行政書士への依頼費用: 許可申請の専門家である行政書士に依頼する場合、20万円から30万円ほどかかることが一般的です。
  3. 施設の構造設備: 200㎡以上の施設で旅館業許可申請を行う場合、建築確認(用途変更)が必要で、これには通常100万円以上かかることもあります。

これらの初期費用に加えて、運営資金の目安も考慮する必要があります。具体的な金額は、計画されている簡易宿所の規模や地域、設備の充実度によって異なります。

簡易宿泊所を開始するまでの期間

簡易宿所営業を開始するまでの期間については、地域や時期によって異なりますが、申請から許可までの標準的な期間は数週間程度とされています。ただし、必要な書類の提出から役所の審査にかかる標準処理期間は約30日とされている場合もあります。具体的なスケジュールは、所轄の保健所や行政書士に確認することをお勧めします。また、許可申請の流れには以下のステップが含まれます:

  1. 事前相談
  2. 許可申請
  3. 施設検査
  4. 許可・営業開始

簡易宿所のメリットとデメリット

メリット

  1. 宿泊日数制限と年間営業日数制限がない: 簡易宿所は365日営業でき、最短1泊2日から旅行者を宿泊させることができます。
  2. 高い利益を獲得可能: 営業日数制限がないため、収益を最大化できる可能性があります。

デメリット

  1. 申請が難しい: 3つの制度の中で最も申請が難しく、自治体の許可が必要です。
  2. 住居専用地域での営業ができない: 簡易宿所は住宅専用地域での営業ができません。
  3. 建築基準法に準拠する必要がある: ホテルや旅館として扱われるため、建築基準法が定める構造設備を有している必要があります。
  4. 最低床面積3.3㎡/人以上が必要: 宿泊者1人あたりの最低床面積が規定されています。

簡易宿所は、継続して空き家を民泊として使用したり、高い収益を求める場合に選ばれることがあります。

簡易宿所を運営する際の注意点

簡易宿所を運営する際の注意点と対策については、以下の要素が重要です:

  1. 許可される地域:簡易宿所は、住居表示された地域や旅館業が許可されている地域に限られます。
  2. 施設の基準:施設は面積や構造設備の基準を満たす必要があります。
  3. 消防法令の遵守:消防法令に適合し、消防署からの適合通知書を取得することが必要です。
  4. 周囲の環境への配慮:学校照会の手続きなど、周囲の環境にも注意が必要です。
  5. 安全管理と衛生管理:施設内の安全管理、衛生管理を徹底し、適切な人員配置が必要です。
  6. 共用部分の清潔さと安全性:共用部分の清潔さや安全性を確保することが大切です。

これらの点を踏まえ、簡易宿所の許可申請に必要な条件を満たし、運営にあたっては設備基準と管理体制を整えることが求められます。また、規制や基準を満たすための維持費や更新手続きへの対応も必要となりますので、継続的な管理が重要です。

特区民泊(国家戦略特別区域法)

特区民泊とは?

特区民泊は、国家戦略特別区域法に基づく事業で、特定のエリアでのみ認められています。旅館業法に基づく営業許可は不要ですが、都道府県知事への認定申請が必要です。最低宿泊日数は2泊3日以上で、1居室の床面積は原則25㎡以上が求められます。外国人の滞在ニーズに対応するため、外国語での情報提供が必須となります。

特区民泊を開始するための手続き

特区民泊を開始するための手続きには、いくつかのステップがあります。以下は一般的なプロセスの概要ですが、地域によって異なる場合があるため、詳細は地元の自治体や国土交通省の民泊制度ポータルサイトで確認してください。

  1. 事業計画の準備: 特区民泊を行うための事業計画を立てます。これには、対象物件の選定、安全対策、運営体制の構築などが含まれます。
  2. 消防法令の遵守: 宿泊者の安全を確保するため、消防法令に適合していることを確認し、必要に応じて管轄の消防署に相談します。
  3. 届出の提出: 国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例として、特区民泊の届出を行います。これには、必要な書類の準備と提出が含まれます。
  4. 運営開始: 上記の手続きが完了したら、特区民泊の運営を開始できます。

特区民泊を開始するための費用

特区民泊を開始するための費用には、いくつかの要素が含まれます。以下に主な費用を挙げます:

  1. 物件取得費:民泊を始めるためには物件が必要です。物件の立地や広さによって費用は異なります。自宅を利用する場合もありますが、賃貸物件の場合はオーナーの許可が必要です。
  2. 家具や家電の購入費用:ゲストに提供するサービスのために、ベッドや冷蔵庫、洗濯機などの家具や家電が必要です。
  3. 消防設備の設置:法律で義務付けられている消防設備を設置する必要があります。これには非常灯や火災報知器、消火器などが含まれます。
  4. 工事費用:物件を民泊施設として利用するための内装工事や消防設備の設置に関連する工事が必要な場合があります。
  5. アメニティや清掃用具の準備:タオルやシャンプー、トイレットペーパーなどのアメニティや清掃用具を準備する必要があります。
  6. 広告宣伝費用:民泊を集客するためには、ウェブサイトやSNSでの広告宣伝が必要です。
  7. 届出・手続きにかかる費用:民泊を開業するためには、届出や必要な手続きがあり、それに関連する費用が発生します。

これらの費用は、地域や物件の条件、サービスの質によって大きく変わる可能性があるため、具体的な金額を把握するには、事業計画に基づいた詳細な見積もりが必要です。

特区民泊を開始するまでの期間は

特区民泊を開始するまでの期間は、地域や時期によって異なりますが、申請から許可を得るまで数週間程度が一般的です。ただし、これはあくまで目安であり、具体的な期間は自治体や申請の状況によって変わる可能性があります。

特区民泊のメリットとデメリット

メリット

  1. 365日営業可能: 他の民泊法と比較して、年間を通じて営業できるため、収益性が高いです。
  2. 申請が通りやすい: 消防設備などの要件が緩和されており、申請が通りやすくなっています。
  3. 近隣住民からの反対が少ない: 特区民泊が許可されている地域では、民泊施設が多く、近隣住民の理解が得やすいです。

デメリット

  1. 最低宿泊日数の制限: ゲストの最低滞在日数が2泊3日以上と決まっており、短期宿泊を希望する顧客のニーズに応えられない場合があります。
  2. 価格競争が激しい: 特区内では民泊施設が密集しており、価格競争が激しくなる傾向があります。
  3. 認定までの時間: 特区民泊の認定を受けるまでに時間がかかることがあります。

特区民泊は、国家戦略特別区域内でのみ許可されており、旅館業法の規制から免除される特例制度です。これにより、一定の条件を満たせば、民泊事業を比較的容易に始めることができますが、上記のような制約も存在します。特区民泊を検討する際は、これらのメリットとデメリットを考慮に入れることが重要です。

特区民泊を運営する際の注意点

特区民泊を運営する際には、いくつかの重要な注意点があります。以下のポイントを参考にしてください:

  1. 認定地域と実施可能エリア: 特区民泊は、国家戦略特別区域に認定されている地域でのみ運営が可能です。運営できる地域は限定されており、自治体が定めたエリア内でのみ許可されています。
  2. 設備要件: 特区民泊では、一定の設備要件を満たす必要があります。例えば、一居室の床面積が25㎡以上であることや、消防法令に適合していることなどが求められます。
  3. 年間営業日数: 特区民泊は年間営業日数に制限がなく、365日運営が可能です。ただし、宿泊客の滞在期間は最低2泊3日以上と決められています。
  4. 近隣住民への配慮: 近隣住民への適切な説明や苦情対応が必要です。特に、マンションなどで運営する場合は、管理規約や管理組合の決議に注意し、必要に応じて許可を得ることが重要です。
  5. 申請プロセス: 特区民泊の運営には、自治体への認定申請や手続きが必要です。申請プロセスには時間がかかることがあり、また、認定されるまでにはいくつかの要件を満たす必要があります。

これらのポイントを踏まえ、特区民泊の運営を検討する際には、事前にしっかりと調査を行い、適切な準備をすることが成功への鍵となります。

新法民泊(住宅宿泊事業法)

新法民泊とは?

新法民泊は、2018年に施行された住宅宿泊事業法に基づきます。オンライン上での届出だけで開始でき、住宅専用地域での運営が可能です。ただし、営業日数は年間180日以内に制限されています。家主が不在の場合は、住宅宿泊管理業者に業務を委託する必要があります。

これらのカテゴリーは、それぞれのニーズや条件に応じて選ばれ、民泊事業の多様性を反映しています。適切なカテゴリーを選ぶことで、法律に適合し、効率的かつ安全に民泊事業を運営することが可能です

新法民泊を開始するための手続き

新法民泊を開始するための手続きには、以下のステップが含まれます:

  1. 届出前の確認:物件が民泊新法で運営できるかどうかを確認します。これには、大家の承諾、マンション管理規約の確認、消防法令適合通知書の入手などが含まれます。
  2. 必要書類の集め:届出書、市町村長の証明書、欠格事由に該当しないことを誓約する書面、住宅の登記事項証明書など、必要な書類を集めます。
  3. 行政への提出:必要書類をすべて集めた後、それらを住宅の所在地を管轄する都道府県知事等に提出します。
  4. 施設の立ち入り検査:届出後、保健所の立ち入り検査が行われます。
  5. 運営開始:すべての手続きが完了し、問題がなければ民泊運営を開始できます。

新法民泊を開始するための費用

新法民泊を開始するための初期費用は、一般的に約300〜350万円が必要とされています。これには内装工事や備品の準備などが含まれます。ただし、既存の物件を改築せずに新たに民泊用の物件を借りる場合は、初期費用が少し安くなることがあります。例えば、3LDKの物件を賃貸する場合、敷金や礼金を含めても約100万円弱で済むことが多いです。

届出自体は無料で行うことができますが、民泊を運営するためには、その他にも様々な手続きや設備投資が必要になるため、全体的なコストを事前にしっかりと計画することが重要です。また、自治体によっては異なる規制や要件があるため、開業前には関連する法律や条例を確認し、必要な書類や手続きについても把握しておく必要があります。

新法民泊を開始するまでの期間

新法民泊を開始するまでの期間については、届出から運営開始までの所要期間は地域や時期によって異なりますが、一般的には数週間程度とされています。具体的な流れとしては、以下のステップが含まれます:

  1. 届出前の確認:物件が民泊新法で運営可能かどうかを確認します。これには、大家の承諾、マンション管理規約の確認、消防法令適合通知書の入手などが含まれます。
  2. 必要書類の集めと提出:届出書や設備要件、居住要件などの必要書類を集め、行政に提出します。
  3. 施設の立ち入り検査:保健所などの立ち入り検査を受けます。
  4. 運営開始:すべてのプロセスが完了し、問題がなければ民泊運営を開始できます。

また、民泊新法の下では年間180日の営業しかできないという制限があります。

新法民泊のメリットとデメリット

新法民泊(住宅宿泊事業法)は、日本で民泊を正式に認める法律であり、住宅を宿泊施設として利用できるようになりました。以下に、民泊新法のメリットとデメリットを紹介します。

メリット

  1. 住宅でも営業可能:一般の住宅でも、条件を整えて届出を行えば「民泊」として営業できます。ただし、地方自治体が条例で制限を設けることもあるため、開設したい地域の条例を事前に調べる必要があります。
  2. 空き家や空き部屋を活用:不動産オーナーにとっては、空き家や空き部屋を有効に活用して収入を得るメリットがあります。

デメリット

  1. 近隣住民とのトラブルの可能性:民泊の営業によって、近隣住民とのトラブルが発生する可能性があります。騒音やゴミ問題などが起こることも考慮しなければなりません。
  2. ランニングコストがかかる:民泊を運営する際には、ローン返済や家賃、通信費、消耗品代などのランニングコストがかかります。

新法民泊を運営する際の注意点

新法民泊を運営する際には、いくつかの重要な注意点があります。以下に主なポイントをまとめました:

  1. 届出が必要:民泊新法に基づき、事業を開始する前に都道府県知事への届出が必要です。
  2. 営業日数の上限:年間の提供日数は180日を超えてはならず、これを超えると違法な旅館業とみなされる可能性があります。
  3. 安全対策の実施:消防法に基づく安全設備の整備や、ゲストに安全で快適な滞在を提供するための準備が必要です。
  4. 近隣住民との関係:音量の管理やゴミ出しルールの遵守など、近隣住民とのトラブルを避けるための配慮が求められます。
  5. 法令遵守:消防法や建築基準法など、民泊施設に適用される法律を遵守することが重要です。

これらのポイントに注意しながら、ゲストにとって価値ある体験を提供し、成功する民泊ビジネスを築くことができるでしょう。

まとめ:民泊経営を成功ために

民泊の経営においてポイントはいくつかありますが、主要なものを以下にまとめました:

  1. 明確なコンセプトの設定:ターゲットとする顧客層に合わせたユニークなコンセプトを持つことが重要です。
  2. 施設環境の整備:快適で清潔な環境を提供し、必要な設備や消防設備が整っていることが求められます。
  3. 計画的な資金繰り:初期投資を抑えつつ、運営コストと収益のバランスを考慮した資金計画が必要です。
  4. 稼働率の向上:集客力を高めるために、オンライン予約サイトの活用やマーケティング戦略を練ることが大切です。
  5. 閑散期の対策:オフシーズンには特別なプロモーションを行うなどして、安定した収益を目指します。
  6. 適切な開業タイミング:市場の需要を見極め、適切な時期に開業することが成功への鍵です。

これらのポイントを踏まえ、綿密な事業計画を立てることが、民泊経営の成功につながります。また、法規制や地域の条例にも注意を払い、適切な許認可を得ることも重要です。

民泊に関する詳細な情報や、最新の手続きについては、国土交通省の民泊制度ポータルサイト「minpaku」で確認してください。また、手続きに不安がある人や、手続きをする時間がない人は行政書士等の専門家に相談することも検討してみましょう。

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この記事を書いた人
野瀬 航平
野瀬 航平
株式会社アンモライト代表取締役/ノア行政書士事務所代表
1995年3月生。中学校教員を勤めた後、学生時代のアルバイト先へUターン。日本一のカラオケ企業を志すも失敗。▶不動産業で再スタートし、大手賃貸仲介・管理会社から、士業連携の売買仲介・コンサル会社を経て起業。▶相続放棄された地方の空き家を再生し、利回り30%で運用中。■保有資格: 行政書士/宅地建物取引士/FP2級/賃貸不動産経営管理士 ■第35回SASUKE出場
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