相続関連

戸籍の束が不要に!法定相続情報証明制度の活用

法定相続情報証明制度
Nose Kohei

法定相続情報証明制度とは?

法定相続情報証明制度とは、相続人が相続関係を証明するために、法務局に提出する一連の手続きのことです。この制度は、相続人から相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)とともに、戸除籍謄本などの書類を登記所に提出し、登記官が相続関係が民法に定められた相続関係と合致していることを確認した上で、認証文を付した一覧図の写しを無料で交付する制度です。

具体的な手続きの流れは、必要書類の収集、法定相続情報一覧図の作成、申出書の記入、登記所への申出となります。申出人は、被相続人の相続人である必要があり、代理人による申出も可能です。ただし、戸除籍謄抄本を提出することができない場合など、利用できないケースもあります。

法定相続情報証明制度が制定された背景

法定相続情報証明制度が制定された背景には、相続登記を促進し、所有者不明土地問題や空き家問題などの社会問題に対処する目的があります。具体的には、以下のような背景があります。

  1. 相続登記の未了問題: 不動産の登記名義人が亡くなった後、相続登記が行われずに放置されるケースが増えていました。これが所有者不明土地や空き家の増加につながり、社会問題となっていました。
  2. 相続手続きの煩雑さ: 複数の法務局に対して戸除籍謄本などの原本の束を提出する必要があり、相続手続きが煩雑であるという問題がありました。
  3. 相続登記の義務化: 令和6年4月1日以降、相続登記の申請が義務化されたことで、相続登記をスムーズに進めるための制度が必要とされました。

これらの背景を受けて、相続人が相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)とともに、必要書類を登記所に提出し、登記官が相続関係が民法に定められた相続関係と合致していることを確認した上で、認証文を付した一覧図の写しを無料で交付する制度が平成29年5月に創設されました1。この制度により、相続手続きにおける負担が軽減され、相続登記の必要性についての意識が向上することが期待されています。

法定相続情報証明制度の利用の流れ

法定相続情報証明制度の利用の流れは以下の手順に従います。

  1. 必要書類の収集: 被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本などの書類を集めます。
  2. 法定相続情報一覧図の作成: 被相続人と戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした図を作成します。
  3. 申出書の記入と登記所への申出:
    • 申出書に必要事項を記入し、収集した書類と一覧図を合わせて登記所に申出ます。
    • 申出は、被相続人の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地を管轄する登記所で行えます。

必要書類

  • 被相続人の戸籍謄本: 出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。これには、被相続人の出生、結婚、離婚、死亡などの記録が含まれます。
  • 法定相続情報一覧図: 被相続人と戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした図です。
  • 申出書: 法定相続情報一覧図とともに提出する申出書には、必要事項を記入します。
  • 公的身分証明書: 申出人の氏名・住所を確認できる公的書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)が必要です。
  • 委任状: 代理人に依頼する場合は、委任状が必要になります。

この制度を利用することで、相続登記に必要な戸籍謄本などの束を何度も提出する手間が省け、相続関係手続きがスムーズに進められます。

法定相続情報証明制度のメリットとデメリット

メリット

法定相続情報証明制度のメリットは、相続手続きを簡略化し、手間や費用を節約できる点にあります。具体的なメリットは以下の通りです。

  1. 手数料が無料: 法定相続情報一覧図の発行には手数料がかかりません。
  2. 5年間何度でも再発行可能: 一覧図は5年間有効で、必要に応じて何度でも再発行が可能です。
  3. 登記官が戸籍を確認: 登記官が戸籍の内容を確認するため、自分で確認するよりも確実です。
  4. 代理申請が可能: 専門家に代理してもらうことができます。
  5. 郵送で申請も可能: 郵送による申請が可能で、外出の必要がありません。

これらのメリットにより、相続手続きがスムーズに進められるようになります。

デメリット

法定相続情報証明制度の利用にはいくつかのデメリットがあります。主なものを以下にまとめました。

  1. 戸籍収集が1度は必要: 初回申請時には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などの書類を集める必要があります。これには時間と手間がかかります。
  2. 対応不可なケースもある: 一部の金融機関では法定相続情報証明制度に対応しておらず、従来通り戸籍の束が必要な場合があります。
  3. 手続きのための書類作成に手間がかかる: 申出のためには、法定相続情報一覧図を自分で作成する必要があり、これには手間がかかります。
  4. すべての相続手続きに使えるわけではない: 名義変更が必要な不動産や預金が複数ある場合は便利ですが、相続手続きが少ない場合は、そのメリットが少なくなります。

これらのデメリットを考慮し、法定相続情報証明制度を利用するかどうかを検討することが重要です。

法定相続情報証明制度の注意点

法定相続情報証明制度を利用する際には、いくつかの注意点があります。以下に主なポイントをまとめました。

  1. 法定相続情報一覧図と相続関係説明図は別物: 一覧図は法務局が発行するもので、相続関係説明図は相続人が作成するものです。
  2. 相続放棄や遺産分割協議の内容は反映されない: 一覧図は戸籍謄本などに基づく法定相続人を明らかにするもので、相続放棄や遺産分割協議の結果は反映されません。
  3. 戸籍謄本などの束以外の添付書類は必要: 法定相続情報一覧図の作成には、戸籍謄本以外にも住民票の写しや委任状などが必要になる場合があります。
  4. 一覧図の写しの保存期間は5年間: 法務局で一覧図の写しは5年間保存され、その期間内であれば再発行が可能です。
  5. すべての機関で扱えるわけではない: 一覧図の写しは相続登記に利用できますが、不動産登記以外の手続きでは法定相続情報番号は使用できません。提出先の機関によっては、一覧図の写しを受け入れない場合もあるため、事前に確認が必要です。

これらの点に注意しながら、法定相続情報証明制度を利用することで、相続手続きをスムーズに進めることができます。

法定相続情報一覧図の作成を専門家に依頼するメリットとデメリット

法定相続情報一覧図の作成を専門家に依頼する際のメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット

  1. 専門知識: 専門家は相続法に精通しており、正確な一覧図を作成できます。
  2. 時間の節約: 専門家に依頼することで、複雑な手続きを自分で行う時間を節約できます。
  3. トラブルの回避: 正確な一覧図により、将来的な相続トラブルを防ぐことができます。
  4. 代理申請: 専門家は申請手続きを代行してくれるため、本人が法務局に行く必要がありません。

デメリット

  1. 費用: 専門家に依頼すると、そのサービスの対価として費用が発生します。
  2. 対応範囲: すべての専門家が全ての相続手続きに対応しているわけではないため、事前に確認が必要です。

専門家に依頼するかどうかは、個々の状況やニーズに応じて検討することが重要です。

まとめ

相続登記をはじめとする様々な相続関係手続きで、戸除籍謄本などの束を何度も提出する手間が省け、相続手続きがスムーズに進むようになります。また、法定相続情報一覧図の写しは、相続登記の申請手続きのほか、被相続人名義の預金の払戻し手続き、相続税の申告、被相続人の死亡に起因する年金等の手続きにも利用できるため、相続に関わる様々な手続きでの利用が期待されています。

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この記事を書いた人
野瀬 航平
野瀬 航平
株式会社アンモライト代表取締役/ノア行政書士事務所代表
1995年3月生。中学校教員を勤めた後、学生時代のアルバイト先へUターン。日本一のカラオケ企業を志すも失敗。▶不動産業で再スタートし、大手賃貸仲介・管理会社から、士業連携の売買仲介・コンサル会社を経て起業。▶相続放棄された地方の空き家を再生し、利回り30%で運用中。■保有資格: 行政書士/宅地建物取引士/FP2級/賃貸不動産経営管理士 ■第35回SASUKE出場
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