不動産売却関連

清算型遺贈:相続財産の新たな選択肢

株式と投資信託
Nose Kohei

はじめに:清算型遺贈とは?

清算型遺贈は、遺言によって特定の財産を売却し、その売却代金を遺贈として相続人や第三者に渡す方法です。これにより、不動産などの現物資産を金銭に変換し、相続の手続きを簡素化することが可能になります。

清算型遺贈のメリット

清算型遺贈にはいくつかのメリットがあります。主な利点は以下の通りです:

  1. 希望通りに売却してもらえる: 遺言執行者は遺言書に基づいて相続財産の分割や処理を行う責任があるため、遺言者の希望に沿った形で不動産の売却が可能です。
  2. 相続人の負担を軽減: 遺言執行者が不動産売却などの手続きを単独で行えるため、相続人や受贈者の負担が少なくなります。
  3. 相続人同士の関係に亀裂が生じにくい: 遺言執行者が定められている場合、相続人は遺言書の内容に反することができず、相続人間のトラブルを防ぐことができます。
  4. 公平な分割: 現物分割による相続人間の紛争を避け、金銭という形で公平に分配することができます。
  5. 相続税の節税: 不動産の相続税評価額は市場価格よりも低く設定されることが多いため、節税効果が期待できます。

清算型遺贈のデメリット

清算型遺贈にはいくつかのデメリットがあります。主なものは以下の通りです:

  1. 手続きの複雑さ: 清算型遺贈は財産の売却が絡むため、手続きが非常に複雑になることがあります。これにより、揉め事に発展する危険も含んでいます。
  2. 相続人名義の登記必要性: 一時的に相続人名義に相続登記をする必要があり、相続人に不動産を処分される可能性があるため、遺言で遺言執行者を選任しておくことが必要です。
  3. 譲渡所得税の問題: 相続人名義の登記を経由するため、相続人に譲渡所得税がかかることがあります。実質相続人はその財産を取得するわけではないため、この譲渡所得税の清算をしないと、トラブルのもとになります。
  4. 売却に伴うコスト: 売却には仲介手数料や税金がかかり、売却価格が相続税評価額を下回るリスクがあります。
  5. 市場状況への依存: 不動産市場の状況によっては、適切な価格での売却が難しい場合があります。

清算型遺贈の手続き

清算型遺贈を行うには、遺言書に具体的な指示を記載し、遺言執行者がこれに従って財産の売却を行います。売却後の資金は、遺言書に記載された受遺者に分配されます。

清算型遺贈の手続きにはいくつかのステップがあります。以下にその概要を示します:

  1. 遺言書の作成: 遺言者は、不動産などの財産を売却し、その売却代金を遺贈する旨を遺言書に記載します。
  2. 遺言執行者の指定: 遺言書には遺言執行者を指定し、財産の売却や債務の弁済を行う人を明確にします。
  3. 相続登記: 遺言者の死後、遺言執行者は相続人名義で不動産の相続登記を行います。
  4. 財産の売却: 遺言執行者は不動産を市場で売却し、売却代金を受け取ります。
  5. 債務の弁済: 売却代金から被相続人の債務を弁済します。
  6. 遺贈の実行: 残ったお金を遺言書に記載された受遺者に分配します。
  7. 登記の完了: 不動産の売却後、買い主への所有権移転登記を行います。
  8. 税務処理: 必要に応じて譲渡所得税の申告を行います。

清算型遺贈の注意点と対策

清算型遺贈を行う際の注意点と対策は以下の通りです:

注意点

  1. 遺言書の明確性: 遺言書には、財産の換価処分に関する具体的な指示が必要です。これには、どの財産を売却するか、売却費用や債務、葬式費用等を差し引いた後の金額をどのように分配するかを明記する必要があります。
  2. 遺言執行者の選任: 遺言執行者は遺言の内容を実行する重要な役割を担うため、信頼できる人物を選任することが重要です。
  3. 相続人の同意: 清算型遺贈は相続人の権利に影響を与える可能性があるため、可能な限り相続人全員の同意を得ることが望ましいです。
  4. 遺留分の考慮: 相続人の遺留分を侵害しないよう、遺留分に十分注意する必要があります。
  5. 税務上の処理: 売却による譲渡所得税や相続税の計算に注意が必要です。

対策

  1. 専門家のアドバイス: 法律の専門家に相談し、遺言書の内容が法的に有効であることを確認します。
  2. 財産評価の正確性: 不動産などの財産の市場価格を正確に評価し、適切な売却価格を設定します。
  3. 税務上の処理: 譲渡所得税などの税務処理についても、専門家のアドバイスを受けて適切に行います。

清算型遺贈の具体例

清算型遺贈の具体例としては、以下のようなケースが考えられます:

  • ケース1: 不動産を換価しないと平等に分配することが難しい場合
    • 被相続人が複数の不動産を所有しているが、相続人間で不動産を分けることが困難な場合、清算型遺贈を利用して不動産を売却し、その売却代金を相続人に分配することができます。
  • ケース2: 相続後に空き家となってしまう場合
    • 被相続人が亡くなった後、相続する不動産が空き家になるリスクがある場合、清算型遺贈により事前に不動産を売却し、現金化しておくことが可能です。
  • ケース3: 被相続人に多額の債務があるが債務超過ではない場合
    • 被相続人が多額の債務を抱えているが、財産の総額が債務を上回っている場合、清算型遺贈を用いて不動産を売却し、債務を弁済した後の残金を相続人に分配することができます。
  • ケース4: 相続税の納税資金に不安がある場合
    • 相続税の納税資金が不足している場合、清算型遺贈を利用して不動産を売却し、納税資金を確保することができます。
  • ケース5: お世話になった方に現金で遺贈したい場合
    • 特定の第三者に対して現金で遺贈を行いたい場合、清算型遺贈を利用して不動産を売却し、その売却代金を遺贈することができます。

これらのケースは、清算型遺贈が相続計画においてどのように活用されるかを示す例です。実際の遺言書作成や手続きには、法律の専門家と相談しながら進めることをお勧めします。

まとめ:清算型遺贈の活用

清算型遺贈は、相続財産の分配を円滑に行うための有効な手段です。しかし、売却に伴うリスクや税務上の問題に注意し、専門家のアドバイスを得ながら進めることが重要です。

遺言・相続専門の当行政書士事務所では、街の身近な法律家としてお客様に寄り添い「安心」「丁寧」なサポートを心がけております。遺言・相続についてお悩みのある方は、お気軽にお問合せくださいませ。また、清算型遺贈を希望される場合には、不動産売却にも対応しております。お客様のご売却の希望時期や価格、ご事情を踏まえたご提案をさせていただきます。

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この記事を書いた人
野瀬 航平
野瀬 航平
株式会社アンモライト代表取締役/ノア行政書士事務所代表
1995年3月生。中学校教員を勤めた後、学生時代のアルバイト先へUターン。日本一のカラオケ企業を志すも失敗。▶不動産業で再スタートし、大手賃貸仲介・管理会社から、士業連携の売買仲介・コンサル会社を経て起業。▶相続放棄された地方の空き家を再生し、利回り30%で運用中。■保有資格: 行政書士/宅地建物取引士/FP2級/賃貸不動産経営管理士 ■第35回SASUKE出場
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